nawa prasad 2012 

 

 

 


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2012.02
 友人(女性)がインド・ジャイプールで交通事故にあった。後頭部を打って、血だらけになり、救急車で病院に運ばれたが、その病院がすごい。前の人の血がついている寝台。頭を縫うことになり、ドバドバーっとアルコールをかけられる。じゃまな毛髪は、はさみで切るのだが、これがまた切れないはさみだ。痛い。でもどうにか治療は終り、病室で横にさせられたが、今度は蟻がくる。蟻が頭の傷にむらがってくるのである。ひぇ〜である。ここにいても蟻にむらがられるだけと覚悟した彼女は、手術後タクシーでホテルに戻ったそうだ。幸い、後日のCTスキャンの結果は頭部に異常なしだったそうだが、とんでもない災難だった。その日ジャイプールの市街は歩行者天国の措置がとられていたようで、実にきもちよく歩いていたら、後ろから猛スピードのバイクに倒されたのである。

 おしゃべりな友人で、こんなことあったのよ、と誰彼かまわず報告したと思う。アーユルヴェーダの先生が、傷そのものには何の関心も見せず、言ったひとこと「Anything comes, anything goes」。「何でもやってきて、何でも去っていく」、これにはいちばん癒されたとしみじみ述懐していた。そうだよなぁ、放射能にも適用できたらいいのになぁ。長ぁぁぁいスパンで見れば、できるかなぁ。(ゆ)

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ロングセラーズ

2012.04  
 私はラッキーなほうかもしれない。娘二人の助産院での出産に立ち会えたからである。

 私は自分自身も娘たちを助産院で生んだ。女のひとのサンクチュアリのような、でも普通の家のような場所で二人とも出産を迎えてほしかった。

 2人目の孫は、この3月に荒川区の小さな助産院で生まれた。のんびりした子で、娘が破水しても23時間陣痛が来なかった。24時間以上になると病院送りになるので、こちらは必死だったが、体操させたり、歌をうたったり、しまいにはやる事がなくなってしりとりをしたりして待った。ようやく陣痛が来て助産院に移動する。私は病院のお産は知らないが、助産婦さんのなんとも気長な待ちの姿勢を見ていると(陣痛のリズムを守り、余計な介入を一切しない!)、ただただ尊敬の念が湧く。その子の頭が出たり引っ込んだりしながら長い陣痛が続くのに、切れないように上手にケアしながら妊婦を励まし、さいごまで生まれてくる子のペースを守るということが、どれほどすごい大人の姿勢だろうかと思った。その人はどこかおばあさんのような雰囲気を漂わせてはいるが、実は若い(30代後半?)人だったのも印象的だった。最後に、娘の連れ合いがへその緒を切って、長い儀式(?)は終わった。

 出産とはある意味「神さまが通る」ようなもので、自分の身体が使われているが、陣痛の痛みはこれまでまったく知らなかった強烈なものであるし(だが終わるとすぐ忘れるし)、出てくる子も自分の子ではあるが、別の人間である。何か奇跡のような、不思議な、でもみながやっているできごとなのだ。

 今、娘は産後の静養で、家にきている。小さな神さまはみなの人気ものである。娘の連れ合いも仕事の合間にやってきて、楽しそうである。孫はこれからどんな人生を歩むのであろうか。ゆばーばとしてはまず祝福したい。(ゆ)
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2012.06  
 朝方、変わった夢を見た。夢のなかで、どうやら私は芝居の勧進元になっているらしく、俳優さん(でも犬だ!)の一団がわが家にやってくる。3.11以降の世界では、すべての芸術が被曝の現実をどのくらい理解しているかが問われており、この戯曲はそれをクリアしたうえ、芸術性も高くおもしろいというので、犬界の岸田戯曲賞を受賞したらしい。演じる人たち(でも犬だ!)も名優ぞろいで、TVや映画で見たことある知的な俳優さんが多い。

 ところで家には老犬が一匹いる(これは本当)。この犬はあほな駄犬である(これも現実に近い)。うちの狭い庭で(犬だから)毎日一定期間公演を打つとして、この阿呆犬の場所がさらに狭くなり、知的でおもしろい名犬さんばかりの間でやっていけるだろうか...ということを私は本気で心配しているようなのだ。庭ではリハが始まり、そのまわりをウロウロ所在なげに動き回るわが老犬....。うちの犬は本物のシンプルな犬なのだが、俳優さんたちは犬なのか人間なのか、名優すぎてよく分からなくなっていく....。

 目が覚めたら、犬は室内でおしっこをしていた。そして、私は、勧進元なのに夢の中で客の入りはぜんぜん心配していなかったことに気づいたのだった。夢も現実も、へん。(ゆ)
2012.08  
 六月の末、犬が死んだ。最後は歩けなくてかわいそうだった。一日店番の日があって、帰ったら、死んでた。私は感受性が鈍いのか、涙もでなかった。翌日も早くから仕事があったので、早起きして、家の庭に穴を掘って埋めた。前からそう決めていたのだ(保健所に電話するのは抵抗があった)。何かお経を、と思い、般若心経の真言、ガーテーガーテー、パーラガーテー、パーラソンガーテー、ボディソーハー、と唱えると、元気なころの楓(かえで)くんの若い四肢が空を飛んでるイメージがきた。自由になったのだ、と思った。往け、往け、彼岸を往け、まったき彼岸を往け、幸いあれ。

 それからはまったく楓の気配はなかったが、先日、お盆のとき、居間でくつろいで丸まっている気がした。ちょっと寄ったのかな。それからは、ときどき、くつろいで家にいる感じがある。いない日も多い、男の子だから? ともかく自由になったので、私はよかったな、と思ってる。楓の介護は、介護の練習、と思っていたが、あっさり逝ってしまったので、いい見本を見せてくれた。私もあっさり(うっかり、でもいいが)死んで、そしたら誰か庭に埋めてくれないだろうか、と思うが、それは犯罪になるな、、、でもそれがいちばん私には自然なのにな。

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 ところで七月半ばに上の娘に女の子が生まれた。これで3人目の孫である。私としては大豊作だ。私が直接関与しないところで、何かが引き継がれていく。これを世間では恵まれている、というのだろう。今度の子はたいへん(今のところ)おとなしい。私が沐浴させても眠っている。まだドリームタイムにいるのだろう。これからどんな子に花咲いていくのだろうか。生まれたときからスマートフォン世代である、想像もつかない。(ゆ)  
2012.10  
 最近、同居人がいる(女のひとと猫)。犬が死んでから完全にひとり暮らしになったので、その人の次の段階への間の短い期間だが、彼らの存在はありがたい。とくに猫! 犬と違う可愛さだ、とても賢い。まっくろで毛足が長く、まんまるの目で、ちょっとふくろうみたい。臆病なやつなので、そして私も猫アレルギーがあるので、お互いにおそるおそるの距離を少しずつ縮め、3週間後の今は、お互いを認め合ってる感じ。昨日は甘えてきたので、超嬉しかった。アレルギーも時々目が痒くなるくらいで、さしてひどくない。週末はその人と猫はいなくなることが多く、土日は帰ってもなんだかつまんない。四つ足が家にいることはほんとに格別。ただ、行動が縛られるから、まだ自分で飼う気にはなれないけれど...。

 昨日は別の友人も泊まりに来て、シェアハウス状態。夜は酒盛り?で、料理の甲斐もあるというものだ。以前「あなたは何に帰依してる?」と突然問われたとき、思わず「野菜、、、」と答えたくらい、野菜のそれぞれの個性?に参っている私。それを帰依と呼ぶのは大げさだけど、でも自然の恵みはいいな。そのうえ、ひととの歓談(古い言葉だな…でも言い得ている)もあったら、このうえ何が必要かと思う。もちろん げ のつくやつは 特にいらない。(ゆ)
2012.12  
 夜眠る前に、孫たちのことを少し考えた。明日から沖縄に行くので、飛行機の中で小さいから、だいじょうぶかな、と。そして見た夢は、娘がまだ小さい。一日2個目のアイスクリームを許すかどうか、でも、ともだちづきあいも彼女なりにあるのだろう、と何も言わなかった。そしたら、案の定、お腹をこわすという夢。夢から醒めたら、私はひとり暮らしのベッドの上だった。

 このところ、眠る前に、石牟礼道子の高群逸枝を描いた評伝『最後の人』を少しずつ読んでいる。最初の頃は逸枝に尽くした橋本憲三氏の言葉を読む度に毎日泣いていた。そのうち、石牟礼道子の日記風になり、水俣から上京して、昭和40年代の東京・世田谷の森の家で、逸枝全集を作る為に憲三氏としばらく暮らした頃の覚え書きがそのまま載っている。その中に、息子に会いたいと何度も書いてあったのが、きっと先の夢に微妙に影響したのだろう。

 ひとの暮らしということを考えると、時代はどんどん変わるけれど、その心情の根底は変わっていない。ひとを愛して、暮らして、子を育てて、子や連れ合いと別れて、死んでいく。そのいとおしさ、はかなさ、時には乱暴さも、老年になってくると夢のようだ。ひそかに私は、縁のあったひとたちに、愛しているよ、愛していたよ、と言いたくなる。他に何ができようか、愛する以外に? ひとの愛は自然に溢れてくるものなのだ。報われるとか報われないのレベルでないことは、身にしみてきた。(ゆ)  
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この文章は紙版「ほびっと村学校かわらばん」の編集後記です。ナワプラサードの高橋ゆりこによって書かれました。

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