nawa prasad 2016


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2016.02  
<<人生パチンコ玉論と人生玉突き事故論>>

 結婚していた頃、年2回の里帰りで、東京に戻るとき、いつも最後は首都高だった。スピードをあげた車でくねくね走っていると、自分がパチンコ玉のような気分になった。ちーんじゃらじゃら、とどこかに落ちて、家に着く。でもパチンコ玉を打っているのは、自分なのか、他の誰なのかは判然としてなかった。

 今は、また高速道路のイメージなのだが、人生玉突き事故論者だ。4台目くらいになると、なにがどうしてそうなったのか、今はここ、だ。

 雪のふる日、新宿で2件の約束があった。夜のほうはキャンセルになり、夕方のほうはなっていない。西口の喫茶店で待ったが、相手は全然来ない。あれ?と思い、メールしてみたところ、忘れてたとのこと。なにぃ。しかたない、新宿をぶらぶらしてみよう。雪は降っている。久しぶりに紀伊国屋書店に行く。あまり、おもしろくない。絵本や美術書を見て少し楽しみ、詩のコーナーで、白石かずこの詩集を読む。あまりの面白さに感動する。なんだ、すごいな。1冊思潮社の安い本を買い、家に帰る。夜遅く、別の友人から電話があり、さびしいょぅ、と訴えられる。ただ聞いているのもなんだかなぁと思ったので、白石かずこの詩を2つばかり、詠んだ。ふたりでたいへん面白がり、いい感じになった。これが、玉突き事故の4台め、である。私は積極的に何かしたわけでない。雪が最初の原因だが、あとは玉突きである。たまたま、私はその過程を全部見たが、友人はとつぜん電話で詩を詠まれたわけだ。

 パチンコ玉論よりは、関係性が見えてきたわけだから、いいのかな?(ゆ)

 
 
  2016.04  
   11月から3月までの間、私は拝火教徒だ。都会のアパートで火鉢の炭を熾している。友人たちは一酸化中毒を心配するが、煙の出ない、いい炭を使えば全く問題ない。もう十年も元気です、私は。月に1回15キロの炭を買うが、灯油を買うよりいいかなと思っている。火鉢は西荻のアンティークショップにて。

 炭の火を眺めるのがとても好きだ。海の波と同じで、まったく見飽きるということがない。炭が焼けるときのリンリンという半分金属音めいた音も好きだ。何とも微細ないい音だ。炭の火を見ていると、心もしんとして、何事も考えなくなる。この時間があるから、私はまだ生きていられる。人生は夢のようにめまぐるしいが、全てを忘れて火が燃えるのを見ている時間はなにものにも代え難い。自分が自然の側にいる時間。都会のみなさん、火鉢生活、おすすめです。(少し家が灰っぽくはなりますよ、、あ、でも客は楽しんでくれるし、みなで鍋もできる!)。(ゆ)
 
2016.06  
   空の上から父と母の顔を見た気がする。ハンサムな若い男ときれいな若い女。それだけで私は恋したのだった。生まれてからは父の男っぷりのよさにはちっとも気づかなかった。母は美人で少し可哀相な目にあっていたので、私はうんと恋した。だがそのうち、周囲がおもしろくなり、じゃりん子チエみたいに我が道を行ってしまった。

 今、父は亡く、母の美貌も衰え、しわしわの、小さな子どものよう。髪を洗ってあげると薄っぺたい頭、少ない髪をとぐと目立つ地肌に、恍惚の顔。朝起こしに行くと、いつも死んでるかと思う、それくらい頼りない母。愛しているが少しも知らないひと、MOTHER!! DID YOU HAVE ME? (ゆ)
 
   
   
2016.08  
 孫とのこと

 先日、6歳になる男の子とマリオを実地にするはめになった。私の娘たちはスーパーマリオをファミコンでやっていたが、当時私は興味がなく触らなかった。孫は、最近マリオの攻略本を買ってもらい、でも慎重派なのか、ゲーム上では1面2面を行ったり来たりするばかり。ところがその孫とミニカーで遊んでいるうちに、そのミニカーの私がゲームをする側で、孫が攻撃する側に自然になってしまった。孫は実に楽しそうに、クッパがやってきた、とかいろいろ言う。擬音もたくさん発する。クッパ知らない私は、どう攻撃したらいいか分からず、頭フル回転、手も動かし、場所も移動するのでたいへん忙しい。次から次へと新手の敵が現れるので、必死である。火とか水とか、だんだん敵も手強くなるが、9面に行くと虹がでる、というのを楽しみにがんばった。虹がでた時は嬉しかったが、攻撃はなんとなくしにくい。それでも何とか孫にクリアさせてもらって、10面にでると、なんと敵は赤ちゃん。いや、赤ちゃんには攻撃できない!

 あとで娘に聞くと、虹らしきものはゲーム上にあるが、赤ちゃんの敵はいないらしい。いやまいった。ちょうどポケモンGOが日本で発売された時で、外に出てスマホでゲームしてる現象を、幼稚園年長の子は知らないと思うが、何だか重なっているのだな、現実のリアリティと。なんともおかしな入り交じり方だ。小さい時、宇宙もののテレビ映画を見て、実際にガガーリンが飛んだとき、あ、まだ地球人は宇宙に行ってなかったんだ!とびっくりしたことがあった。それも変な体験だったが、今回のは、そんな分裂はなく、もっと重なっていて、しかも楽しい、、、もう、よう分からん!(ゆ)
 
 2016.10  
  仕入れに行くとき、中央線に乗る。電車のなかでは老若男女みなスマホだ。たまにガラケー、居眠り、そして一番少ないのが本を読んでるひと。おお!と思って、もう書店としては拍手喝采したくなる。どんなにあなたのこと好きか、伝えたくなる。でも熱心に読んでいるので、その姿の美しさを遠くから眺め、満足する。明らかに本屋の偏見とは思うのだが、スマホに見入られている人たちは美しくない。目が開いて、あちこちに飛ぶ集中のしかたがきもちわるい。だが、こんな繰り言は21世紀ではもう老人のたわごとだ。

 神保町で取次ぎをまわる。BOOK LOVERSたちの最後の砦。この小さな取次ぎの町のへんてこりんなおじさん、おばさんに私は鍛えられてきた。変わった人が多かった。店の床にそのまま昼寝しているおじさんとか、読むなと客を叱ってばかりいるおばさんとか、職人っぽいひと、インテリっぽいひと。話してみるとぶっきらぼーでも親切な人が多かった。書店さんお疲れだろうと、飴を置いてある店も何軒かあった。これがけっこう嬉しかったな。

 あのね、みなさん。そういうことがだいじなのよ。小さなやりとり、大きな愛、だよ。スマホは当分やまないだろうけど、本と、それにまつわる文化、なくすとわかるよ〜、大切だよ〜。(ゆ)
 
 2016.12  
なんだか大声でうたいたくなった
なんだか大声でなきたくなった
いつも節制して生きている気がする
節制は大人のたしなみ、とふだんは思っているのだが、
しすぎると自分の本心が行方不明に
おーいおーい、
ぴーぴー、と
心の山奥で鹿のような声が返事する
ぴーぴー、ぴーぴー、これが私のうただ
ぴーぴー、ぴーぴー、これがわたしのいのちだ
(ゆ)

この文章は紙版「ほびっと村学校かわらばん」の編集後記です。ナワプラサードの高橋ゆりこによって書かれました。

 
 
 

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