nawa prasad 2017


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2017.02  
 この頃、母の人生について考える。というのも、先日、家の中で転んでしまい、私が発見した時(数時間経っていたと思われる)は、ガスストーブの前でしゃがんで起きれなくて、ぶるぶる震えていたのだ、それも下半身はパンツ1枚で、、頼りない小さな女の子のようだった。救急車を呼び、病院で後頭部を5針縫い、翌々日には退院した。が、前のようには何だか歩けない。妙によろよろして、それが自分でも癪に触るのか、ちくしょう、ちくしょう、と力を入れようとする。また転ぶと大変と思い、昨夜は母の隣で眠ることにした。うとうとしていると、向こうは起きて何かしている。洋服を移動したり、テレビをつけたり、消したり、パンを食べたり、なんだか目的がない行動。

 ふむ。この人が私を産んだのか。小さい頃親と別れたので、頑張りやさんでもあり、つっぱりやさんでもあった。いろいろ才能があって、きれいで、私は憧れたものだ。父とうまくいってない時期もあり、落ち着いた時期もある。でもさして何を知っているわけでもない。この人の恋は父とだけ?人生でなにが楽しかったのかしら?辛口で、ほめるということが少ない。だが時々、とてもふざける。10年くらい前は、外で出くわすと、いきなりハイタッチ、となったこともあった。元気のいい少女と、不機嫌なおばあさんのコンビネーション。

 それでも私は母の子なのだろう。いろいろ似ている。何かをもらって、また何かを誰かに伝える、それが愛なのかな。なんだか涙がでそう。(ゆ)
 
2017.04  
 長いこと、野菜ゴミをゴミ収集に出すのが嫌だった。都会だから無理なのかなと思っていたが、コンポストをつくってみた。ほんとに小さな庭しかないので、土嚢袋で土と混ぜて。雨で外に出たくない日もあるので、流しの下にペットボトルを切って、生ゴミを入れ、火鉢の灰やら米ぬかを入れたりもする。貯まると外の土嚢袋に移す。春野菜をつくるコンテナに土を入れるとき気づいたのだが、なんと!袋の中にミミズがいたのである。それも太くてりっぱなやつ。思わずにんまり、する。嬉しかった。こんなに嬉しかったことは、久しぶりな気がする。

 新月の日に種をまく。今年は土が豊か過ぎるかなぁ。にんじん、サラダミックス、それに芽がでたじゃがいもを埋める。トマトは土壌がやせているほうがいいと聞くので、どうしようかなぁ。セロリも好きなので初挑戦、でもまだ少し寒いので、次の新月にしよう。

 ああ、何だか鳥になった気分。おいしいものを食べて糞をして、その中の種が土に落ちて成長して、またそれを食べに来る。人間の場合はもう少しややこしいけど、だけど、そんなに違わんじゃん。もうすぐ桜の季節、花見だね。花の季節に、樹を見上げると、鳥たちが花の蜜を吸っている。その眺めがなんとも好きだ。そんな幸せをもっと味わおう。(ゆ)
 
2017.06  
 風呂場で獣の匂いがする。

 って穏やかじゃないですが、ホントの話。いや、絨毯を洗ったのです。高かったけど、気に入って昔えぃって買ったギャッペ。アフガニスタンから来たのかなぁ。うちの火鉢とソファの間に敷いて(そんなに大きくない)、冬はいつもそこにいた。さて日本は衣替えの季節だよ、灰も吸ってるし、そうだ風呂で洗おうと思った。湯船につけて、足で踏んづけて。泥水がたくさん出て、獣の匂いが充満する。羊さん何匹分だろう。干すのも重すぎて、まだ干せない。しばらく風呂場に横にして放置。風呂場を覗くたびに、なんだか横たわった獣がいるみたいで、ドキッとする。まだ重いし、匂いもはなっている。もう少し乾いてから、外で干そうと思っているのだが。

 薫習(くんじゅう)って言葉を知ったのはいつだったか。仏教用語です。カルマは行為という意味らしいが、その行為の放つ匂いのことかな、その行為をしたのはずいぶん前だったのに。絨毯が乾いている時には、獣の匂いに気づいたことはなかった。濡れたら、匂ったのだ。おかげで、羊さんのことや、織り手のことや、輸送されたことなど、想像が働いた。うちへ来てよかったのかわからんが、私は愛でてるから、まぁいいか。今はもの、だけど、昔生きてたもの。そんなものから、生きてた頃の匂いがする。なんだかさらにこの絨毯を好きになったけど、これは反仏教的かもしれない。薫習をなくして行くのが目標なんだから、あるいはいい匂いならいいのか? いいたねを蒔くならいいのか? まぁ色々考えさせられた楽しい事件でした。

 開け放った窓から、今にも片足を家に入れそうになっている野良猫と目があった。思わず、「あら、どなたぁ?」と間抜けな声をかけてしまった。ほんとに、周囲は知らないものやことばかり。(ゆ)
 
   
   
2017.08  
 夜中の2時にピンポーン。出ると隣家の母だった。「電気が、電気が、、、」とアワアワしている。こちらは眠っていたので、少し機嫌が悪い。いい加減にしてよ、お母さん。でも心配なので、一応母の家に行ってみる。電気は全て付いている。何だったの?と聞くと、何だっけ、何だっけ、もう忘れたから帰っていい、とヤケクソ気味。異常はなさそうだったので、やれやれと思いながら、自分の家に戻る。
 かわら版のレイアウトをしてくれる内海さん。その山の家のモデムが前夜の雷で壊れたとの連絡あり。データのやりとりは通信ではできない事態となる。USBメモリーに移して郵送で送ろうと思いついたのが、暑い中、外に出てる時だった。店に電話して口頭でスタッフに伝えようとしたら、USBという言葉が出てこない。えっ、焦った。スタッフは辛抱強く、何ですか、と聞いてくる。ますます焦ってしまい、え〜え〜、とまるで前夜の母のよう。結局彼女がUSBですね?と当ててくれて、データを移してくれて、宅急便で送ってくれた。

 反省しました、母への対応。その話を当のスタッフにしたら、相手に通じなくて言葉がなくなっていく体験を話してくれた。年上の友人の具合が悪いので、見舞いに行き、ついでに海外の娘さんに電話する羽目に。帰ってきて欲しいと伝えようとするのだが、向こうは帰ってこない言い訳を論理的に(英語的に)延々と説明し続け、もう負けるというか、黙るしかない、みたいなことだった。

 母<年下の娘(これは私)<年下のスタッフ<海外の論理性 でした。誰でも苦手はあります。ぐるぐる周りのお話でした。私はうちのスタッフの若さ+聡明さにやられているのでした。(ゆ)

 
 2017.10  
 隣家のおじさんは、一人暮らしのバカヤローおじさんである。ほぼ毎日、多分ラジオやテレビに向かってバカヤローと怒鳴る。あと罵詈雑言が続く。まぁこんな世の中じゃ気持ちはわかる。しばらく静かだと寂しい気持ちが湧くほど、私にとっては慣れきった日常となっていた。

 ところが! ある夜、店から帰って夕食を作り、ひとり窓際で食べていると(だいたいその時間は彼のバスタイム)、その風呂から、「お母さん、大好きだよ。お母さん、ありがとう!」の大声が何回も、、、。こんなことは初めてだ。いい年のおじさんがお母さんを慕っている、、、。大野一雄の舞踏『私のお母さん』を思い出し、なんだか感激してしていると、同居人が帰ってきた。この人はうちに2ヶ月の予定で滞在する外国暮らしのお姉さん。この話をすると、彼女はその昼間セージで自分の部屋を清めていたのだが、効かないぞ?自分が汚れているのかもと思って、ベランダに出て盛大に炊いたらしい。ベランダの前が隣家の風呂である。それが効いたのじゃ?と言うのだが。明日も炊いてみようとか言うのだが。いやその実験は良しだが、そんな意図を持ったら効かんじゃろ。ここ十年くらいバカヤローを聞き続けていたので、いずれにしろこの変化はすごいな〜、と盛り上がった夜でした!(ゆ)
 

この文章は紙版「ほびっと村学校かわらばん」の編集後記です。ナワプラサードの高橋ゆりこによって書かれました。

 
 
 

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